Core i5以上は無用! 新型Core i3もほぼ最速

 メーカあるいはそこから稿料を得るレビューアは販売戦略上から明かせないようですが、一般的なビジネス用途(学習用途含む)向けの第11世代Coreシリーズ搭載機において、Core iグレードの高さ、型番の大きさに余分な金を払う意味はありません(この状況は、第12世代Coreシリーズまで続きましたが、第13世代Coreシリーズでは、i5がi3を上回っています。もっとも、2023/7/13現在の価格は、i5-1335u搭載機の方がi3-1305u搭載機を下回っています)。というのは、下位グレードのCore i3 1115G4も、ほぼ最速と言えるからです。上位型番、上位グレードのCore i3 1125G4、Core i5 1135G7、Core i5 1145G7、Core i7 1165G7に比べ、アプリ起動、Office処理の性能が同等かほとんど劣らないばかりか、肝心なWebブラウジングの速度性能が、ベンチマーク結果によっては最大で10%程度上回るくらいの性能を有しているからです。しかし、この事実は、購買欲喚起トリック? 近年の性能スコア急伸でも参照している各CPUを搭載している機種のベンチマーク結果をそのまま比べるだけでは見えてきません。評価機種のメモリ容量やストレージ速度など性能に効く互いの周辺パーツ構成が異なっているからです。

 従って、正確なCPUの性能比較には、CPU以外は周辺パーツが変わらない同一機種、同一条件でのベンチマークスコアが必要ですが、残念ながら、ネット上には2つまでのものしか見つかりません。そこで、ここでは、同一機種での2つまでのベンチマーク結果を組み合わせて互いの性能比を算出することで、Core i3 1115G4、Core i5 1135G7、Core i7 1165G7の性能比較を行いっています。


1.第11世代ではCore i3 1115G4がCore I5 にわずかに勝る!

 一つ目は、CPUがCore i3 1115G4かCore i5 1135G7かのみ異なる同一機種に関する以下の2つのレビュー記事

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ベンチマーク結果に基づく表1です。同一のDDR4-3200 8GB(オンボード) 、250GB NVMe対応 M.2 SSDストレージの構成でのCore i3 1115G4、Core i5 1135G7に対するPCMark 10のベンチマーク結果から、ビジネス関連のスコアを抜き出したものです。信じられないかもしれませんが、Core i3 1115G4がEssenticalsの中のVideo conferrencingとContents Creationで負けている以外は勝っています。最近では長時間使用することが多くその重さがストレスとなりがちなWeb browsingで9%も勝っています。

2.第11世代ではCore i5 がCore I7にわずかに負ける!

 2つ目は、IntelのCPU、第11世代Coreについての性能比較ののベンチマーク結果に基づく以下の表2です。DDR4-3200 8GB(オンボード) 、256GB PCIe対応SSDストレージの構成でCore i5 1135G7、Core i7 1165G7を搭載するdinabook SZ/HPに対するPCMark 10の関連スコアを抜き出したものです。Core i5 1135G7が全体的にわずか負けているとは言え、Web browsingでは2%近く勝っています。ここで、dinabook VZ/HP、GZ/HPではなく、SZ/HPのスコアを用いたのは、先のパソコン工房製ノートと、メモリのスペックと容量が同一な上、SSDの速度性能が同等であるからです。

3.ベンチマーク結果の併合で示されるCore i5以上無用

 以上の2つの表より、Core i5 1135G7の性能が同一であるを利用して2つのベンチマークデータの違いを補正し、Core i3 1115G4に対する性能比を求め直したのが以下の表3です。

この表3より、Webブラウジングを重視する場合、11世代の上位グレードCore CPUと同様、Core i3もノートPC向けCoreシリーズの中でほぼ最速と言えることがわかります。他のスコアも、30%以上負けているContents Creationを除けば、Productivityで5%、Video conferrencingで7~9%、それぞれ負ける程度とわずかな違いで、いずれも体感できる差ではありません。従って、ビジネス用途では、クリエータでもない限り、わざわざ高いお金を出して、Core i5以上を選択する意味はない、すなわちCore i5以上無用と言えるでしょう。


4.第11世代搭載機ではCore iグレードよりストレージ性能

 ほぼ最速といっても、IntelのCPU、第11世代Coreについての性能比較のベンチマーク結果によると、Core i3 1115G4搭載のDell Inspiron 13 5301は、Core i7 1165G7搭載機のトップに、ビジネス用途で要のEssenticalsのスコアで10%以上負けています。この負けはどこかる来るのでしょうか。それは電池や熱設計の余力に基づく継続可能電力消費の上限(PL1)を高めたり、ストレージあるいはメモリの速度と容量を速めたり、増やしたりしていることによります。ベンチマーク結果を分析すると、ストレージの速度、その中でも ランダムリ-ドの速度がベンチマークスコアに一番効くことが見えてきます。メモリの速度と容量も効いてはいますが、ストレージの速度ほどではありません。従って、より高い性能を得たい場合は、Core iグレードよりも、ストレージの ランダムリ-ド速度の高い機種を選ぶと良いでしょう。いずれにしても、それによる性能の違いは体感できるほどではないので、そのために数万もかける価値はないと思われます。

 また、Core i3 1115G4ではDDR4-3200以外のサポートメモリが、Core i5以上のLPDDR4x-4267ではなく、LPDDR4x-3733となってしまう弱点がある点も気に掛かるかもしれません。しかし、こちらの弱点はCore i3 1115G4搭載のInspiron 13 5301が、より高速なストレージを備えるCore i7 1135G7搭載機のdinabook VZ/HPにストレージの性能の影響を受けにくいProductivityのスコアで2%程負ける程度であり、そこまで気にする弱点ではないでしょう。

 さらに、Core i3 1115G4搭載モデルの場合、廉価版ということで、メモリの使用個数が半分で済むシングルチャンネル(例えば8GB×1)構成を採ることが多い点も気に掛かるかもしれません。しかし、これによる性能低下もRyzen搭載機での比較データから明らかなようにビジネス用途ではわずかなので気にする必要はありません。ただし、Contents Creationのスコアはかなり低下するので、Adobe Lightroom、Premiere Elementsなどをある程度以上利用する場合はデュアルチャンネル対応(例えば4GB×2)があれば、メモリ容量を倍の8GB×2にしても、デュアルチャンネルのモデルを選ぶようにしましょう。


5.おわりに

 残念ながら、ベンチマーク結果は公表サイトによって、機種や設定が異なるためか個々のスコアが10%程度バラつき、10%以下の優劣の差はそのバラつきの中に埋もれてしまいます。とは言え、Core i7 1165G7と比べても性能がほとんど劣らないことは確かです。また、Core i7 1165G7とCore i7 1185G7もわずかな性能差しかないことが、Intel Core i7-1185G7 vs Core i7-1165G7 Evaluateに示されています。従って、結局、一般的なビジネス・学習用途において、Core i3 1115G4は第11世代の上位グレードCPUと同様にCoreシリーズの中でほぼ最速と言っても過言でないでしょう。

 ただし、テレビ会議のZoomで仮想背景を利用するには、ZoomのCPU制約からCore i5以上のCPUと異なり、Snap Cameraを組み合わせることが必要になる点には注意ください。このSnap Cameraとの組み合わせでは、Core数に余裕がない分、CPU負荷も気になるところですが、3世代9種類のCPUでカメラエフェクトソフト「Snap Camera」を検証によれば、さらに画面共有まで問題なくできそうです。というのは、並列処理性能のPassmark CPU Markが30%程度下回るCore i3 6100で、ZoomとSnap Cameraの組み合わせ処理が67.4%のCPU使用率に収まっているからです。

 また、わずかな手間とは言えチューンアップには関わりたくない人にとって、Core i5以上のCPUを選ぶ方が良いかもしれません。役に立たないバックグラウンドアプリ、不要になった常駐アプリ、不要なサービスなどが動いていてもコア数の余裕が効き、性能が落ちにくいからです。


 現状では、Ryzen 5 7530U等との価格競争のおかげで、第13世代のCore i3に負けなくなったCore i5 1335U搭載機の価格が大きく値を下げており、あえてCore i3搭載機を選ぶ理由はなくなっています。しかし、Core i7(1360p)に上げても性能が上がらない状況は続いています。機種選定時には、実際の用途に対応するベンチマーク結果をしっかりチェックされると良いでしょう。

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